12月10日(現地時間)ディズニーは、投資家向けのイベント"INVESTOR DAY" で長期的なロードマップを発表しました。
その内容は映画業界を大きく揺るがすもので、大量に製作される動画コンテンツのほとんどを自社が所有するDisney+、Hulu、ESPN+といったネット配信サービスで提供するというものです。
ネット配信サービスについては、先日ワーナー・ブラザースが2021年に公開する映画を劇場とネット配信サービスHBO maxで同時公開とすると発表したばかりで、今回のディズニーの発表はそれを踏襲する形となりました。
ワーナー・ブラザースの発表については、業界内の映画プロダクション、映画監督、シネコン経営者等から批判的な意見が出ていることから、今回のディズニーの発表についても大きな波紋を呼びそうです。
このように、映画をネット配信と劇場で同時公開する動きは言うまでもなくコロナ禍の影響によるものです。
欧米の都市部のようにまだ映画館が閉鎖されたままの地域もあれば、日本のように再開している地域もあるため、その両方で映画を公開し続ける方法として、映画スタジオもネット配信に大きく舵を切らざるを得ないという事情があります。
ただし、これには当然のこととして映画館の経営者から反発が起きることが予想されます。
以下、コンテンツの公開日は米国での公開予定時期であり、日本での公開時期は異なる場合があります。
Huluはディズニーが大株主の子会社ですが、日本のHuluは現在のところ日本テレビの子会社が運営しているため、ディズニーが日本のHuluで直接コンテンツを配信することはなさそうです。
Disney+の米国外向けブランドStarとは?
コンテンツ配信のプラットフォームとして新しくStarとStar+というニつのブランドが発表されました。これはDisney+に代わる米国外向けのブランドで、いずれDisney+と統合されることになっています。統合は2021年2月からシンガポールを皮切りに開始され、2021年後半には東ヨーロッパ、香港、日本、韓国で実施されます。
Star+は、ラテンアメリカ向けブランドで主にスポーツ番組を配信するようでです。
実写コンテンツの新作
実写コンテンツも非常に多くの製作が発表されています。「エイリアン」「ターナー&フーチ すてきな相棒」「スリーメン&ベビー」「天使にラブソングを」「ウィロー」と1980~1990年代のヒット作がリメイクやシリーズ化で復活する点が特徴的です。
発表されたほとんどのコンテンツはHuluまたはDisney+(米国外ではStar)で配信されます。注目のコンテンツは次のとおりです。
Only Murders in the Building
セレーナ・ゴメス、スティーブ・マーチン、マーチン・ショートが出演する新シリーズ。Hulu(米国外ではStar)で公開予定。
Dopesick
実話のドラマ化。出演はマイケル・キートン、ピーター・サースガード、ロザリオ・ドーソン。Hulu(米国外ではStar)で公開予定。
Nine Perfect Strangers
ニコール・キッドマン、メリッサ・マッカーシー出演のスリリングな新シリーズ。Huluで公開予定。
The Old Man
ジェフ・ブリッジス主演。トマス・ペリー原作のスリラーシリーズ。FX on Hulu(有料テレビFXと提携したHulu)で公開。
Alien
エイリアンが初シリーズ化。ただし、まだ企画段階で公開は未定。
The Mighty Ducks: Game Changers
1990年代に公開された映画「マイティ・ダッグ」シリーズの続編で主演はオリジナルと同じくエミリオ・エステベス。Disney+で配信されるシリーズ。
Turner & Hooch
トム・ハンクスのコメディ映画「ターナー&フーチ すてきな相棒」のリメイク(?)Disney+で公開予定。
Three Men and a Baby
1980年代にヒットしたトム・セレック主演の「スリーメン&ベビー」をザック・エフロン主演でリメイク。2022年にDisney+で公開予定。
Night at the Museum
「ナイト・ミュージアム」シリーズがアニメ化。同シリーズの監督ショーン・レヴィがプロデュース。2021年にDisney+で公開予定。
Jungle Cruise
日本でも劇場で予告編が流されたものの、その後公開が延期されたままとなっているエミリー・ブラント、ドウェイン・ジョンソン主演の「ジャングル・クルーズ」。2021年7月「劇場」で公開予定。
Pinocchio
以前から噂されていた実写版「ピノキオ」が噂どおり、トム・ハンクス(ゼペットじいさん)出演、ロバート・ゼメキス監督(バック・トゥ・ザ・フューチャー)で製作。なぜかDisney+で公開。
Disenchanted
製作が噂されたままとなっていた「魔法にかけられて」の続編「魔法からさめて(原題:Disenchanted)」についてディズニーが公式に製作を発表。引き続きエイミー・アダムスが出演し、公開はDisney+での独占配信。
Sister Act 3
「天使にラブソングを」の3作目をウーピー・ゴールドバーグ主演で準備中。Disney+で公開予定。
ルーカスフィルムの新作
ディズニーは、スターウォーズ関連だけで10シリーズ公開すると発表しています。当初、ショージ・ルーカスが構想していた9話分について製作公開が完了したことから、これからはジョージ・ルーカスの手を離れて、いよいよディズニーオリジナルのスターウォーズへとフェーズが移行していきます。
その他、インディ・ジョーンズの新作について、具体的な情報が発表された点が大きなニュースとなりそうです。
OBI-WAN KENOBI
スターウォーズのオリジナルキャスト、ヘイデン・クリステンセンとユアン・マクレガーが出演。それぞれ、ダース・ベイダーとオビワン・ケノービを演じる目玉シリーズ。
Lando
スターウォーズのスピンオフでランド・カルリシアンが主人公となる新シリーズ。まだ企画段階で公開は未定。
Willow
1980年代に公開された映画「ウィロー」の新シリーズ。パイロット版の監督は「G.I.ジョー バック2リベンジ」のジョン・M・チュウ。2022年にDisney+で公開予定。
インディ・ジョーンズシリーズの新作
いま撮影準備が進行中で、監督は「フォードvsフェラーリ」のジェームズ・マンゴールド。ハリソン・フォードが出演し公開予定は2022年7月の予定。
ディズニーアニメーションスタジオの新作
ディズニーがスティーブ・ジョブズからピクサーを買収してからは、ピクサー作品とディズニーアニメーションスタジオ作品の境はなくなりつつあるように見えますが、ディズニー内部では物理的な製作スタジオも作品傾向も分けられています。
発表されたラインナップからもネット配信への強い意欲がうかがえます。
「ラーヤと龍の王国」はDisny+でも公開
当初、劇場公開作品として発表されましたが、今回の発表で劇場とDisny+で同時公開されることに変更されました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【更新】「ラーヤと龍の王国」は劇場とネット配信で同時公開へ
人気の劇場公開作品をシリーズ化
「ベイマックス」「ズートピア」「プリンセスと魔法まほうのキス」「モアナと伝説の海」がDisney+でシリーズ化。「モアナ~」のみ2023年公開、その他は2020年に公開予定。
Encanto
コロンビアが舞台のアニメ作品。監督は「ズートピア」のバイロン・ハワードとジャレド・ブッシュ。音楽は「モアナと伝説の海」のリン・マニュエル・ミランダ。
ピクサーの新作
ピクサーからは、「ソウルフル・ワールド」に続く新作として既に「Luca」の製作が発表されていますが、今回の発表ではその他の新作についても明かされました。人気のトイ・ストーリーがPART4まで進んでいることからすれば、スピンオフ作品の製作は当然の流れでしょう。
Lightyear
トイ・ストーリーのスピンオフでバズ・ライトイヤーが主人公。バズの声をクリス・エヴァンスが担当。
Turning Red
エキサイトすると巨大なレッサーパンダに変身するメガネっ娘が主人公。監督は短編「Bao」のドミー・シー。2022年3月11日に劇場で公開予定。
マーベルの新作
ディズニーは、マーベル作品についても10シリーズを新たに製作すると発表しています。人気シリーズを中心として、意欲的に続編やスピンオフ作品を製作するようです。
Doctor Strange In The Multiverse of Madness
「ドクター・ストレンジ」の新作。ベネディクト・カンバーバッチ主演、監督は「スパイダーマン」のサム・ライミで2022年3月25日公開予定。これは「Wanda Vision」とスパイダーマンの新作に繋がる作品とのこと。
Black Widow
公開が延期されているスカーレット・ヨハンソン主演の「ブラック・ウィドウ」は2021年5月7日に劇場で公開予定。
Ant-Man and the Wasp: Quantumania
アントマンシリーズの3作目。オリジナルキャストであるポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス、ミシェル・ファイファーと監督のペイトン・リードは続投。公開は未定。