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カンヌ常連組の河瀨直美監督「朝が来る」がオスカーを獲るまでのハードル

米アカデミー国際長編映画賞(旧外国語映画賞)へ向けて、日本からは河瀨直美監督の「朝が来る」が名乗りを上げました。
同賞には、各国から代表作を一本だけ推薦できることになっており、日本では大手映画会社によって組織された日本映画製作者連盟が代表作を選んでいます。

河瀨直美監督は、1997年「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭新人賞を受賞して一躍国際的に注目され、2007年には「殯の森」で同映画祭のグランプリ(審査員特別大賞)を受賞、その後も審査員を務めるなどカンヌ国際映画祭ではすっかり常連となっています。

カンヌやヴェネチア受賞後の傾向

これまでの事例からいうと、アカデミー賞はカンヌやヴェネチアといったヨーロッパを代表する国際映画祭とは一線を画しており、ヨーロッパで受賞した作品はアカデミー賞では受賞しにくい傾向にありました。
日本映画を例にとると、古くは「影武者」(黒澤明監督)が挙げられます。カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したものの、アカデミー賞ではノミネートのみで終わっています。選者であるアカデミー会員は、スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスを代表とするクロサワファンが多いはずですが、オスカーを獲得することはできませんでした。
その後も、カンヌ国際映画祭審査員特別大賞受賞の「死の棘」(小栗康平監督)や、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞の「HANA-BI」(北野武監督)もアカデミー賞ではノミネートにも至っていません。
記憶の新しいところでは、カンヌで絶賛されパルムドールを受賞した「万引き家族」(是枝裕和監督)があります。アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされたものの受賞には至りませんでした。

逆にヴェネチアでもカンヌでもスルーされた「おくりびと」(滝田洋二郎監督)はノミネートされた時点でほとんど有力視されていなかったにもかかわらず、いきなり外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)をかっさらってしまいました。しかも、滝田洋二郎監督はそれまで国際色が薄く、ハリウッドでもけっして有名な映画監督ではありませんでした。

アカデミー賞の特殊性

「シンドラーのリスト」に至るまで、長年の間スティーブン・スピルバーグがオスカーを手にすることができなかったことからも分かるとおり、アカデミー賞は既にスポットライトが当たっている映画人や作品には厳しい傾向にあります。さて、カンヌ国際映画祭の受賞歴があり、常連でもある河瀨直美監督の「朝が来る」に対し、アカデミー賞はどういった反応を示すのでしょうか。
昨年は、既にカンヌ映画祭でパルムドールを受賞していた「パラサイト 半地下の家族」が、アカデミー賞では国際長編映画賞のみならず、監督賞と作品賞まで独占して世界をあっと驚かせた事例もあります。ただし、この大勝の裏では韓国の業界側からアカデミー会員への強力なロビー活動があったと言われています。

アカデミー賞の国際長編映画部門は今後、映画芸術科学アカデミーが選考を行って、世界から5本のノミネート作品を決定します。現在、各国からどんどんと代表作品が挙げられてきている状況です。まずは、ノミネートへのハードルを一つ超える必要があります。

「朝が来る」公式サイト:asagakuru-movie.jp

追記

アカデミー賞選考対象作品に登録

1月29日、映画芸術科学アカデミーは長編アニメーション映画部門、長編ドキュメンタリー映画部門、国際長編映画部門について選考対象作品を発表しました。
「朝が来る」(英題:True Mothers)も予定どおり選考対象としてリストされています。

今回は93ヶ国から出品があり、そのなかから2月10日に15本の作品に絞られ、更に3月15日に正式なノミネート作品が発表されます。受賞式は4月26日に予定されています。(日にちはすべて日本時間)
なお、今回対象となった作品は国際長編映画部門のみならず、作品賞にノミネートされる可能性もあります。

選考対象作品リスト:アカデミー賞公式サイト(PDF)

追記

アカデミー賞ノミネートならず

2月10日(日本時間)、映画芸術科学アカデミーは国際長編映画部門について、ノミネート予備選考の結果(Shortlists)を発表しました。15本にまで絞り込まれた作品リストに「朝が来る」は含まれておらず、これで日本からの国際長編映画部門でのノミネートは事実上なくなりました。

出典:アカデミー賞公式サイト

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